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【特別対談 #2】日本画家 アラン・ウェスト 〜 影を追いやって、日本は大切なものを失った

理想とする絵を描くために自ら考案したと思っていた絵の具は、実は日本に存在していた!? そう知った青年アラン・ウェストは、まだ見ぬ顔料をもとめ日本にやってきた。当時まだ大学1年生。日本語も分からぬまま来日した当初は、「日本には少しいたら十分…」と思っていた。それが今や滞在は30年を越し、東京・谷中でアトリエを構えるに至る。
不思議な縁に導かれ、日本画の世界に入りこんだ経緯。来日以降、「日本の美」を見つめ続けてきた慧眼の士に、日本文化の変遷はどう映っていたのか。日本画家 アラン・ウェスト氏に訊く。

【第1話】「理想の顔料を求めて、日本へ」はこちら

聞き手:にっぽんマルシェ 渡辺

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ウェスト  実際、東京芸大の近くには目的の画材屋が4軒もありました。こうした専門店は全国でも9店しかありませんが、そのうちの4店までがこの近くにあるのです。そしてここで、自然を描くには理想的というものに出会いました。

これ(写真左下)は「本群青」(ほんぐんじょう) という石と「孔雀石」というもので、原産はアフガニスタンですが、西洋の絵ではほとんどが化学顔料である中、日本にはこうした天然石でできた顔料や自然の膠(にかわ)が豊富にありました。これらは、決してチューブから出してペタペタと塗っただけで出せる色ではありません。自然を描くには理想的だと思いました。

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ーー  そしてもう1つ、アランさんの絵を語る上で外せないのが、筆の存在ですね。「意を込める」という表現をしていたと思いますが……。

ウェスト  そう、自然を描く道にどうやったらたどり着けるのか……。 そう思い、試行錯誤する末にいきついたのが「線」です。

ただの1本の線ではなく、太さや細さ、ボヤっとした濃淡、勢いの強弱……。 それらは筆を通して自分の意思を伝える、流し込むことではじめて作品にエネルギーが込められていく。

それにより絵が発電池のようになって、見る人にエネルギーを伝えることが出来る。そう考えています。

そのツールとして「筆」は最適なものであるし、「エネルギー」というのが僕の絵におけるテーマですね。

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ーー  静的なものである絵を描き、ご自身もとても穏やかなお人柄のアランさんから、テーマが「エネルギー」と聞くのは新鮮な感じがします。

ウェスト  僕にとって絵は、おもてなしと一緒です。対象を技巧的に描いて「いい(上手い)でしょう?」というのではなく、描かれた木が踊っている、風がにおいを伝えてくる、絵の中に道があれば入っていけそうな気がする……。

写実的であるよりも、自然のなかで一緒に森林浴をしているような、そんな感覚。そういう作品を創っていければと思っています。

だから絵が、エネルギーをそなえたものであるなら、見る人の心情や置かれた環境により、語りかけてくるものが違ってくるのではないでしょうか。

「日本人の生活から影を無くしてやる!」とでも言わんかの勢いで、蛍光灯を普及させたのは、明らかに良い影響を与えませんでした。

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ーー  環境ということでいえば、この谷中の地というのは、東京あるいは日本全体でみても非常に独特な場所です。ここにくると、いつも『陰翳礼讃』(谷崎潤一郎・著)を思い浮かべてしまいます。

ウェスト  こんなことを言うと多くの日本人に怒られてしまいますが、私は日本文化の、ことに美に関していうと、とても大きな悪影響を与えた責任ある1人は、松下幸之助さんだと思っています。

勿論、実業家としてとても素晴らしい方だというのは言うまでもありませんが、まるで「日本人の生活から影を無くしてやる!」とでも言わんかの勢いで、日本中にくまなく蛍光灯を普及させ、生活シーンから影(陰影)を追い出してしまった。

こと日本の美ということに関して、これは明らかに良い影響を与えませんでした。

朧な灯りのもとで陰が揺らめき、箔や色が違った顔を見せる。
暗がりがあるから、ものへの畏れや想像力がかきたてられる。

強い明かりで隅々まで照らし、本来、見えなくてもよい、それまでは気づかずにいたシミまで徹底的に無くそうとし始めた。

これにより化粧品メーカーは恩恵を受けたかもしれませんが、日本文化や日本人の感性に与えた影響は少なくなかったと思います。

(つづく)

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