ここは瀬戸内海のど真ん中、愛媛県上島町の岩城島。小さな島々が遠くまで霞むさまは、新渡戸稲造をして「瀬戸内海は、世界の宝」といわしめたほど。
その美しい浜辺を気分よく歩いていると、散歩中の子犬を発見。

こんな砂浜をひとり占めして、気持ち良さそう。颯爽とかけるその姿は、まるで…

ブルドッグ?
いえ、
本物のブタでした。
島に来る前から聞いてはいたのです。
「青いレモンの島」には、レモンで育つブタがいる。
でもまさか、こんな砂浜でお目にかかるとは……。都会の人が見たら(犬が見ても?)羨ましがるのは間違いない “お散歩” をしていたのが、松浦農場の松浦史拓さん(44)とまだ1才に満たない子ブタちゃん。

松浦さんはこの砂浜の真向かいにある農場でブタを育てる畜産家です。もともとは広島で10年ほど、エンジニアとして働いていたという。それがなぜ、この岩城島で養豚を?
「私が30才のときに、母が病気になったという知らせを受けて、「どうだ?」と。いま考えたら、だまされたのかもしれません」と笑う。
そういいながらも、父から受け継いだ農場は、今や当初の2倍もの規模に。もちろん、はじめから順風だったわけではない。営業にいっても「ブタは要らないから、魚ないの?」と言われたという。
島特産のレモンとの出会いが、飛躍のチャンスに!循環型農業の誕生
その松浦さんの転換期となったのが、島特産のレモンとの出会い。
「青いレモンの島」® 岩城島では、フレッシュなレモンを売るだけでなく、ジャムなどの加工品もたくさん作っている。その際、レモンの皮は苦味の原因となるため、1つずつ皮をむき、果肉と果汁だけを使い、残りは廃棄していると聞いた。
「その皮を生かせないか?」
これが大きな転換期となる。

もともと廃棄していたレモンの皮が、雑食性のブタにとってはエサになる。レモンで育ったブタが、良質な『レモンポーク』となる。そのうえ、排泄物を発酵させ、堆肥化すると、良質な肥料となって畑に還る。そこからまたレモンが育つ。
つまり、『レモンポーク』のここが賢い!
【Point 1】養豚家は、地元の安全なレモンの皮をエサ用に譲ってもらえる(エサ代削減)
【Point 2】ジャムをつくる加工場は、廃棄していた皮をひき取ってもらえる(廃棄費削減|廃棄するにもお金はかかる)
【Point 3】良質な堆肥が、地元農家に還元される(肥料代低減)
【Point 4】さらにおいしいレモンが採れる!(循環型農業の実現)
そしてもちろん、
【Point 5】『レモンポーク』がおいしい!
三方良しならぬ、養豚家、加工場、農家、消費者、そして環境(地元)にも良い、五方良しだ。そうしてできたのが、こちら。
『レモンポーク・ソテー』
もうこの際、余計なものはナシとしましょう。レモンとレモンポーク、あとは塩・胡椒で十分おいしい!
料理が苦手な人でもこれなら安心。フライパンでササッと炒めるだけ。超カンタンで見栄えよし。それでいて抗疲労効果、スタミナ・ビタミン補強となるレモンを皮ごと食べるから、仕事や家事でお疲れの人も、部活をガンバる子どもたちにもオススメです。
かつて「ブタは要らない。魚はないの?」といわれた松浦さん。この『レモンポーク』を育てるようになって、ほとんど営業はしていないそう。
「脂に甘みがあるのに、しつこさはない。」その噂がクチコミで広がり、自然と引き合いが増えたから。レモン博士から始まった「青いレモンの島」づくりは、みごとにレモン農家だけでなく、島全体を潤している。