一般常識として、女性に対して年齢を聞くのはマナー違反である。それをわきまえてはいるが、曽爾村では敢えて、そんなルールを知らんぷりするのがむしろ良いように思う。
なぜなら必ず、「信じられない!」と驚くことになるから。 それほどに会う人、会う人ことごとくが、顔の肌ツヤよく、若々しい。
名勝・屏風岩のふもと長野地区で『完全無農薬 田舎こんにゃく』をつくる「びょうぶ 山桜の郷」の皆さんを訪ねたときもそうだ。
メンバーは、総勢36人。週に1度、地区の加工場に集まって『田舎こんにゃく』をつくっている。この日、作業後に残ってくれていたのは、代表の奥西幾代さんを含め4名。
ちょっと遠慮する素振りを見せつつ、聞いてみた。「失礼ですが、おいくつですか?」 76才、69才、73才、74才。なんと、平均73才!! とてもそう見えないのは、写真からも分かって頂けると思う。
肝心の『田舎こんにゃく』について。まずは何もつけずに、お刺身でいただく。
無味無臭、グニャグニャとただ弾力があるのが、一般的なコンニャクの印象。味がなければ美味しいとも美味しくないとも思わない。
ところが、この「びょうぶ 山桜の郷」さんの『田舎こんにゃく』は、明らかに違う。
歯ごたえは、ただグニャグニャと固いのではなく、むしろ「プリプリ」に近い。特に刺身で食べると、一瞬、白身魚?と思うようなプリプリ食感に、ほんのり淡い味わいが漂う。その旨みはあくまでも野菜。魚では勿論ない。こんにゃくが、本来「芋」(こんにゃくイモ)であることがしっかりと伝わる。
この『田舎こんにゃく』の良さ(他こんにゃくとの違い)が1番ハッキリ分かるのは刺身だが、料理の1品として「美味い!!」と感じさせてくれるのが、特製味噌で食べるときだ。
甘辛い味わいの「山桜の郷」さんオリジナル味噌だが、『田舎こんにゃく』との相性が抜群なのだ。おかず味噌とも味噌汁用味噌ともまた違った味わいで、「田舎こんにゃくを最高においしく食べるための味噌」といえる。こんにゃくを熟知し、愛しているからこそ、作れる味だろう。
残念なことにこの味噌は、まだ非売品らしい。ぜひ、特製味噌ダレ付『田舎こんにゃく』の販売を実現して欲しい。どこにも他所にない、オリジナル商品になること間違いない。
「曽爾村と関わった人には、キレイ&健康になってもらう!」
「びょうぶ 山桜の郷」さんの加工場は、名勝・屏風(びょうぶ)岩の麓、集落を見渡す丘の上にある
もう1つ『田舎こんにゃく』だからできる、驚きの食べ方が「わらび餅」。なんと、きなこをかけて食べるのだ!
きなこと言われて、一瞬「えっ?」と思ったが、すでに刺身でその美味しさを知っているだけに、「これはいける!」とすぐ理解できた。実際に、きなこでも蜜でもピタリと合うのだ。これもやはり、ゴムのように固いだけのコンニャクでは出来ない。程よい歯ごたえと淡い味わいがあってこそだ。刺身でよし、調理・加工によし、そしてデザートにもよしの「万能こんにゃく」といえる。
『田舎こんにゃく』は、長野地区の父ちゃん&母ちゃんの協同作業により成り立っている。まず原料となるこんにゃく芋の生産は、地区の父ちゃんたちの仕事。屏風岩から湧きでる天然水を惜しげもなく生かして、完全無農薬で育てている。「こんにゃく芋は、鹿が食べないから、休耕地対策にもなる」という。
週に1度のこんにゃく作りは、衛生的な専用加工場で行う。メンバーのチームワークは抜群だ。
その芋を丁寧に手ごねして作るのが、母ちゃんたちの仕事。「1番おいしいときのものを食べて欲しい」からと、市販されるほとんどのこんにゃくは賞味期限1ヶ月以上あるのに対し、「山桜の郷」さんのこんにゃくは、わずか1週間足らず。
目先の効率だけを考えれば、なにもそこまでする必要はない。しかし、自分たちが1番納得し、誇らしく思えるもの、自分自身が買って食べたい・家族に食べさせたいと思うものをつくることが、結局はお客様と長く、強く、つながり続けられることだと良く分かっていらっしゃる。先義後利。巡りめぐって、自分たちの幸せとなり返ってくる。
しかし、メンバーの想いはそこにとどまらない。
「大事にしたいのは、おいしさと健康。つくり手はもちろん、食べる人、そして村に来てくれる人。曽爾村と関わって下さる方、みんながキレイになって欲しい」と、スケールが大きい。どんどん幸せに、そしてキレイになって頂きたい。こんにゃく作りが、曽爾村発「幸せ伝播プロジェクト」に見えてくる。おいしく、やさしい気持ちになれる『田舎こんにゃく』です。