2月初旬。北三陸の海は、凍てつく寒さ。
その波間をぬって小さな漁船が沖へゆく。
ここは世界三大漁場の1つ三陸沿岸。青森県八戸から宮城県金華山まで、およそ400kmつづくリアス式海岸の中でも、とりわけ荘厳な景観を呈するのが 岩手県田野畑村です。
かつては「陸の孤島」とまでいわれた村の住民が、口をそろえて自慢する美味。それが「早採りワカメ」。1年でわずか3週間ほどしか採れず、村外に流通することもほとんどない。
本当にそれほど旨いのか? ワカメはワカメでしょ? そんな思いを抱きつつ、浜の漁師を訪ねました。
これぞ三陸リアス式海岸と呼ぶべき、圧巻の景観がつづく
「地味な仕事のわりに体力を使うので、実はこの作業はあまり好きじゃないんです」。そう笑うのは、田野畑村 島越地区で代々漁師を営む三浦太知(たち)さん。父の善人(よしと)さんと2人で愛船・前島丸に乗りこみ、ワカメが育つ網をたぐる。
2人で1日中仕事をしても、ロープ1本分を終えるのが精一杯。親潮と黒潮がぶつかる急流な北三陸の海で、終日波にゆられるのはいかにベテラン漁師といえどキツイのです。それでも「早採りワカメの美味しさは格別」 と太鼓判を押す。
実は、田野畑村のワカメが出荷のピークを迎えるのは、3月〜4月。まだ少し先のこと。1年で最も水温が下がる2月は、本来なら、外海でワカメをじっくり育てる大切な時間です。それなのに、村の人たちは「1番ウマいのは、早採りワカメ」と断言する。
「早採りワカメは、文字どおり “早採り” したワカメです。茎はまだ細く、葉も透けるほど薄い。つややかな色もこの時期ならでは。サッと湯がくだけですぐ食べられます」と、三浦さんはいう。
十分に育ちきると、硬さが増す。そうなる前のいわば “ワカメの子どもたち” だからこそウマい。その特性を最大限に生かす料理が「ワカメしゃぶしゃぶ」です。
採りたてワカメは、茶褐色(写真奥)だが、湯にとおすと一瞬で鮮烈な緑に変わる。たったこれだけで、極上の品のでき上がり。
余計なものは、なにもいりません。ただお湯をわかすだけ。塩もダシも、調味料さえいらない。沸騰したお湯のなかに「早採りワカメ」をサッとくぐらす。一瞬で、茶褐色のワカメがエメラルドグリーンに変わる。それだけで、「もう十分においしい」。
はじめて食べた人は、ほぼ例外なく、こう漏らします。「ワカメって、こんなに美味しかったんだ…」。
北三陸の海は、季節と共にさまざまな恵みをもたらす。左からワカメ、ウニ、ホヤ。
それほどの美味ならば、なぜ、全国的には無名なのか? 田野畑産ワカメに魅せられ、その特徴を研究する東北大学 農学博士の石川豊氏は、自らの講演をこう題します。「なぜ、田野畑産ワカメは世界一なのに、世界一になっていないのか?」
石川氏によると、どうやらこういうことです。
● 流通量・出荷期間があまりに限定的(つまり単に知る人が少ない)
● 一般に流通するときは、保存性のよい「塩蔵ワカメ」に加工される
(早採り「生」ワカメは日持ちしないので地元・近隣消費にとどまる)
● 漁協経由で首都圏に出るときは、「三陸産ワカメ」として他のワカメと混ざってしまう
この状況に歯がゆい思いをしている住民は多く、しばしばこんな本音が漏れ聞こえてきます。
「三陸ワカメとひとくくりにしないで!」
「よそのワカメとは、モノが違う」
ふだんは温厚で、なにごとも謙遜する住民が、ことワカメの話になると強烈な自負を顕にします。
しゃぶしゃぶを堪能した後は、サラダ、酢の物、味噌汁… ワカメ尽くしを味わって欲しい
このおいしさは、食べて頂かねば分からない。
論より証拠です。
そこで、漁師たちと連携し、特別企画をご用意しました! 「朝採りたて」を北三陸・田野畑村から、その日のうちに直送します!!
天候により漁に出られない日もあるので【お届け日指定は不可】です。「日にちは任せるから、自慢のワカメを送ってくれ!」という方は、ぜひご注文ください。