「曽爾村と関わった人には、キレイ&健康になってもらう!」独自戦略で未来を拓く、名水の郷

奈良県内に39ある自治体の中でも、5番目に小さい曽爾村。人口およそ1500人。奈良市内から車でおよそ1時間半、大阪からも約2時間と、比較的近い距離にありながら、鉄道をはじめ公共交通機関に欠けるため、移動は車に頼らざるを得ない。
人口流出、少子高齢化、etc… 地方の村に共通する課題に悩まされ、明るい話題は少ないだろうか… 失礼ながら、訪問前にはかなり地味な印象を持っていた。ところがだ… お会いする人の表情がことごとく、明るい。そして皆、機敏だ。何か違う。

村内を巡ると、集落の女性陣が集まってつくる特産品あり。国際的な賞の受賞者あり。世間一般では悪名高い(?)第三セクターも、ここでは18年間黒字つづきで、村に多額の税を納める優良企業だ。
1村1品運動ならぬ、1地区1品運動で集落ごとに特色を打ち出し、地域を活性化している。良い意味で予想を裏切ってくれた、曽爾村の魅力に迫る。

素肌美人のヒミツは、湧きいずる名水と完全無農薬「田舎こんにゃく」にあり!?

一般常識として、女性に対して年齢を聞くのはマナー違反である。それはわきまえているが、曽爾村では敢えて、そんなルールを知らんぷりするのがむしろ良いように思う。

なぜなら必ず、「信じられない!」と驚くことになるから。 それほどに会う人、会う人ことごとくが、顔の肌ツヤよく、若々しい。

名所・屏風(びょうぶ)岩のふもと長野地区で「完全無農薬 田舎こんにゃく」をつくる「びょうぶ 山桜の郷」の皆さんを訪ねたときもそうだ。

メンバーは、総勢36人。週に1度、地区の加工場に集まって「田舎こんにゃく」をつくっている。この日、作業後に残ってくれていたのは、代表の奥西幾代さんを含め4名。

ちょっと遠慮する素振りを見せつつ、聞いてみた。「失礼ですが、おいくつですか?」 76才、69才、73才、74才。なんと、平均73才!! とてもそう見えないのは、写真からも分かって頂けると思う。

肝心の「田舎こんにゃく」について。原料となるこんにゃく芋は、地区の父ちゃんたちが完全無農薬で育てたもの。その芋を丁寧に手ごねしてつくるのが、母ちゃんたちの仕事。「大事にしたいのは、おいしさと健康。つくり手はもちろん、食べる人、そして村に来てくれる人、曽爾村と関わって下さる方、みんながキレイになって欲しい」と、スケールが大きい。

「田舎こんにゃく」について、もっと読む

ゆず味噌にすると味噌が勝ってしまうけど、糀なら負けない。梨のように爽快なヤーコンも、人気急上昇!

曽爾村全9地区のうち、最も人口が少ないのが小長尾集落。小さいからこそ、住民の結束は強い。そこで進行するのが、「幸せの黄色いゆず計画」。代表の井上治子さんにお話を伺った。

またも脱線するが、井上さんもやはり素肌美人だ。とても77才とは思えない。「今日はあいにく作業をしていなくて…」と仰りながらも、メンバーと一緒につくったゆず加工品を多数紹介してくれた。

特に気になったのが、「ゆず糀(こうじ)」。ゆず味噌、ゆずコショウは、他所でもよく目にするが、井上さんたちは糀にゆずを加えている。

「商品開発は、失敗の連続。皆で意見を出し合いながらやっています。ゆず糀にしたのは、味噌だとどうしても味噌の風味が強く、味噌が勝ってしまう。糀ならもっと風味がやさしいのでちゃんと、ゆずの味と香りが生きるんです」と井上さん。

試食すると、確かにゆずの風味がしっかり感じられ、糀のほんのり甘い味も口の中に広がる。「大事にしたいのは、おいしさと健康… 曽爾村と関わって下さる方、みんながキレイになって欲しい」こんにゃくのつくり手・奥西さんの言葉に相通ずるものがある。

ここ小長尾地区ではもう1人、素敵な人と出会う。井上善富さん。男性だが、やはり77才とは思えぬ若さがあり、言動もハキハキ。善富さんが出してくれたのが、ヤーコン。これまた美容と健康には、大注目の食材だ。

近日公開 乞うご期待!

「榧(かや)の話をすると、途端に元気になる年配の方がたくさんいます」

榧の木といっても、なじみがある人は少ないかもしれない。かつては日本各地で高級建材として使用され、実から絞った油は食用や化粧用として、さらには煎って子どものおやつや民間薬としても重宝された。

今そんな姿を見る機会は、めっきり少なくなってしまった。が、曽爾村には今でも榧の群生地があり、特に珍しい左巻き榧という品種が国の天然記念物にも認定されている。

「榧は昔から、村人とともにあったものなので、年配の方に話をするととても喜んで、いろんな話をしてくれます」と教えてくれたのは、「榧の実プロジェクト」の中心的存在、曽爾村農林業公社の髙松さん。

聞けば、榧が日常の風景から失われていくにつれ、木を伐ってしまった方が良いのでは… という声も一部にはあったという。木から落ちた実が、道路に油を広げて車のスリップ事故につながりかねないというのが理由だ。

それでも髙松さんは、榧が300年以上もこの地に息づいてきた大切な財産であり、その機能性や食用としてのおいしさに着目。周囲の人たちに丁寧に説明・説得しつつ、地道に実を1つ1つ拾いながら、徐々に仲間を増やしていった。

そうして完成したのが、「榧の化粧水」と「榧の実ナッツ」だ。

近日公開 乞うご期待!

見かけはただのホウレン草。実はフルーツトマトを超える、糖度10度以上のスーパーホウレン草!

「曽爾村には、寒熟ホウレン草っていう、甘〜いホウレン草があるらしいよ」。事前にそうは聞いていた。

でも正直、あまり期待していなかった。冬の寒さにさらしてホウレン草の力(糖度)をひき出す「寒締(かんじめ)ホウレン草」なら他にもあるし、それらは確かに甘さはあっても、葉がシワシワにちぢれる「ちぢみホウレン草」のためすき間に砂が入って、下処理に手間がかかるのだ。

曽爾村の「大和寒熟(かんじゅく)ほうれん草」を見て、アレっ?と思った。葉がちぢれていない。
これで本当に糖度が上がっているの? 担当の中森さんに聞くと「糖度10度以上」だという。(ちなみに、フルーツトマトの基準は、糖度8度以上)

しかも「ビタミンCの含有量は、全国平均の約1.4倍、抗酸化力は約1.6倍」とのこと(「オーガニックフェスタ2017」調べ)。

来た!曽爾村のお約束(!?)「つくり手はもちろん、食べる人、村に来てくれる人、曽爾村と関わる人、皆がキレイになって欲しい」

ポパイはホウレン草を食べてパワーをもらったが、曽爾村では「大和寒熟ほうれん草」を食べて、美と健康を(そして、もちろん美味しさも)もらうのだ!

近日公開 乞うご期待!

狙うは、国際総合部門・金賞! 83才・萩原さんはさらなる高みを目指す。名水の郷ブランド「曽爾米」

「はじめは、規模も小さいし、ウチで食べられればいいわ… だった」と言う。「余ったらJAに出せばいい」。そう思っていた萩原康孝さんが、一昨年、国内最大の米コンクール「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」水田環境部門で金賞に次ぐ「特別優秀賞」を受賞する。

国内はもちろん、台湾、アメリカを含む世界5671の検体の中から選ばれた快挙だ。今や誰もが認める「曽爾村のお米づくり名人」。なにが萩原さんをそこまで変えたのか?

「今の時代は、お米づくりも“ようけとれたらええわ”ではあかん。担い手がいなくなれば、水田は荒れていく一方。村の景観も保てなくなる。若い人にも米づくりをしてもらわないと。一緒に村のため、お米づくりで稼げる状況をつくっていきたい。そして、出ていった若いもんが帰ってきたり、移住してくれる人の生業になっていければ」

胸中に危機感と夢があったのは、間違いない。
小さい村だからこその勝算もある。

村が谷の合間にあるから、田んぼは大きくできない。手間がかかる。狭いからこそ、細かなところまで目が届く。手入れをしてあげられる。そして山からの恵み、ミネラルを豊富に含んだ天然水が湧き出る。

村内の水田に流れこむ4つの水源ごとにお米の特徴を研究。それぞれ別ブランドとして商品化することにした。

  屏風岩の湧き水は「もちもち」。 鎧岳の湧き水は「しっかり」
  曽爾高原の湧き水は「甘め」。  曽爾川の清水は「さわやか」

期せずして、住民自身が自分たちの住む土地のことを考え、見つめ直すきっかけにもなった。

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