MAZDA 愛が止まらない 〜 小さき者が宿す美のフォルム

Spain highway

MAZDA とは、ごぞんじ広島に本社を置く自動車メーカー・マツダ のこと。正直これまで車にさしたる興味はなく、移動手段の1つ程度にしか思っていなかったのだけど、MAZDA のデザインには品があるなぁ… とは感じていた。

そんな中、一橋大学の楠木建 教授『仕事がうまくいく7つの法則 〜 マツダのクルマはなぜ売れる?』(フェルナンド・ヤマグチ著)という本を評して、こう述べていた。

「日本のもの造りが忘れていたこと、そして、これからも忘れてはいけないことが詰まっている。」

軽妙な語りで人気のビジネススクール教授が、ここまでいうのだ。きっと中身の濃いものなのだろう。読んでみた。(クルマに興味のない人でも、例えばこういうものには何らかの「品」や「艶」を感じるのではなかろうか ↓ )

同書は MAZDA の役員・社員へのインタビューをもとに、これまでの取り組みや考え方を追ったものだが、むずかしい技術論はなく、あらゆるビジネス・商売にたずさわる人が愉しめるようになっている。

「はじめに」で著者がいうように、

「取材対象に感情移入することは物書きとしてタブーなのだけれども、好きな気持は止められない。この本は、多分に偏りのある、ピンクの色眼鏡を通して書かれていることを始めにお断りしておく。特に他のメーカーの方々には本当に申し訳なく思っている。サーセン。」

という具合だ。さらに、

「何しろいったんは地獄を見て、瀕死の重傷から立ち上がってきた会社なのだ…(中略)… 読者諸兄が何かに躓いたとき、明日が見えなくて泣きそうになったときに繰り返し読んでいただければ、きっと答えが見つかると思う。私は彼らの言葉で何度も救われた。」

とつづく。

小さな村の活性化や商品開発に挑む人にも、参考になることがありそうだ。たとえば…

city drive

【鉄則 一】 小さいことを恥じない

“ ワシらしょせん世界の2%。広くより「深く」愛されたい。「シェアが小さい会社はどう振る舞えばいいのか」という起点に立ち、ハラを決めて行動する。”

⇒ 「会社」を「村」に置き換えて考えてみる。小さいことが武器になる兵法がある。

 
【鉄則 五】 ほかの真似を決してしない

“ マツダが大きな会社のマネをして、同じものをたくさん造るとどうなります。とんでもないチラシが家のポストに入るわけですよ。「デミオ88万円」なんて書いてある。必死になって造ったクルマが安売り、叩き売りされる。チラシをビリビリ破り捨てたくなりますよ。”

⇒ トヨタや独フォルクスワーゲンと同じ戦略をとって勝てるわけがない。「売る」ことに躍起になるより、お客様に「選ばれ続ける」ための仕事をする。その意思統一こそ大切。

 
この書で MAZDA 熱に触れた私は、もう少し詳しく知りたくなり、デザイン部門のトップ・前田育男 氏(常務執行役員)の 『デザインが日本を変える 〜 日本人の美意識を取り戻す』 もいっき読みした。

こちらはヤマグチ氏の本より抑揚がきいてはいるものの、内容は同等以上にアツい。デザイン統括者だけあって、文章にまで品がある。

椿

『魂動』 デザインにこめたメッセージは、2つ。

「艶」 立ち昇るあでやかな色気。浮き立たせる媚薬の香り。夜の闇に咲く真紅の椿のように、静かに発熱する。

「凛」 触れれば切れそうな緊張感。張り詰め、冴えた空気。極限までそぎ落としたデザインが体現するのは、エッジに宿る怜悧な光。

『デザインが日本を変える 〜 日本人の美意識を取り戻す』より一部抜粋

たかがクルマ。機械製品だ。されどこの情念がこめられていればこそ、あの 「VISION COUPE」(当ページ動画内)の妖しいフォルムが生まれた。この本にも「小さき者」が宿す矜持が散りばめられている。

“ 私はただ自分の足元を見つめ直し、捉え直し、もともと持っていたポテンシャルをひき出すことに全精力を注ぎ込んだだけである。 そもそもどこかから借りてきたような付け焼き刃のアイデアで真の成功など得られるものだろうか? それは社内に根を張っていないぶん耐性がなく、脆弱なもののように感じられる。

大事なものは常に外ではなく自分たちの中にある。苦境を脱するためのアイデアも、周囲から抜きん出るための渾身の一手もすべては自分の内側に眠っている。

特にピンチに陥ったときこそ自分たちの内面をしっかり見つめ、何が得意で何が不得手なのか、自分たちは何のためにこの仕事に従事し、これまでどのような歴史を刻んできたのか ーー それを確かめることが必要になる。”

小さな村の、まちづくりそのものではないだろうか?
そのプロセスは苦難を伴うもので、容易に成功にたどり着くものではない。MAZDA とて会社消滅の危機というどん底からはい上がり、ようやく掴んだつかの間の栄誉(カーオブ・ザ・イヤー等、各賞受賞)に過ぎない。

それでもなお未来に向けて、艶やかな香気と凛としたフォルムを纏う姿勢には、喝采を送りたくなる。読後、とても清々しい気分になる。また一歩踏み出す力が湧く。

マツダ本

2冊ともオススメですが、個人的には『デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す』の方が、ピンとした臨場感があって好みです。

“ はたして、私たちが2年間にわたって心血を注ぎ続けたデザインは見る者の心を動かし、圧倒し、感動を生むことができるだろうか? 美しいものを貴ぶ感性と、車に対する心からの愛情、そして人が丹念に作り上げる “モノ” への敬意を、今一度取り戻すことができるのだろうか? ”

『デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す』(前田育男・著)

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