今回、長野県木曽町で生まれた2つの商品をご紹介するにあたって、私のテンション、かなり上がっています。とても画期的なものに出会ってしまったから…
いつも小さな町を訪ね歩いているので、昔ながらの料理やご当地食材にふれるのは珍しくありません。その一方、「画期的なもの」に出会う確率は、それほど高くはありません。どうしても目線は過去を向きがちで、未来志向が薄れるからです。
だからこそ、町や村の歴史に根ざしながらも、先進的なものを見つけると、グッと体温が上がります。「発酵のまち・木曽町」の 植物性乳酸発酵ヨーグルト 『SNKY』(スンキー) と 豆乳 『SN26』 は、まさにそれ。
まずは、植物性乳酸発酵ヨーグルト『SNKY』(スンキー)について。
今やスーパー、コンビニの店頭には機能性をうたうさまざまなヨーグルトが並んでいますが、そのいずれとも一線を画します。 なにが違うか?
簡単にいうと、こうです。
動物性乳酸菌 + 牛乳 = 市販のヨーグルト
植物性乳酸菌 + 豆乳 = 市販の植物性ヨーグルト
植物性乳酸菌 + 牛乳 = ヨーグルトにならない!
スンキ菌 植物性乳酸菌 + 牛乳
⇒ 強くて、おいしいヨーグルトになる!
つまり、従来の常識では、牛乳に植物性乳酸菌を加えても発酵がすすまず、ヨーグルトができない(植物性乳酸菌は牛乳ラクトース/乳糖をうまく分解できない)。ところが木曽町で300年もの歴史をもつ伝統発酵食品「すんき」から採った「スンキ菌」(植物性乳酸菌)ならば、おいしいヨーグルトになる!
この事実に多くの専門家が「ありえない!」と驚いたわけです(※1) それこそが『SNKY』。
※1 H.I.F社と長野県工業技術総合センターはすんきに含まれる植物性乳酸菌からヨーグルトに適した菌を分離・培養に成功。「スンキ菌 T998/e102」と命名して特許申請。H.I.F社HPより
ph 3.7 の酸性でも活発に生きるスンキ菌が、腸まで届き、アレルギー改善に期待!
動物性はダメ、植物性乳酸菌はスゴイ、というのではありません。植物性か動物性かは、単に菌の由来(菌の餌になるもの)が違うだけのこと。
『SNKY』が画期的なのは、スンキ菌が酸性(胃酸や胆汁酸)のなかでも生きつづけるので、多くの乳酸菌とちがって胃で分解・吸収されずに腸まで届くということ。その結果、腸内フローラ(環境)をととのえ、アトピーや花粉症の原因とされる特殊タンパク質「IgE」を有意に抑えるという研究報告がなされているのです(※2)
この研究開発に木曽町は、長野県工業技術センターと共同で6年もの年月をかけています。
※2 参考文献) 増田健幸・保井久子ほか:Jap. J. Lact. Acid Bacteria 21: 42-49. 2010
(画像左)郷土の漬物「すんき漬」は味噌汁に入れたり、ご飯にのせてかつお節と醤油をかけるなど食べ方は様々。(画像右/提供:HIF)すんき菌のコロニー
幾多の失敗を経て、ようやく製品化にこぎつけたのは 【木曽町 #3】搾りたて牛乳でつくる開田高原アイス、チーズ、ヨーグルト でご紹介した 開田高原アイスクリーム工房の皆さん。
このヨーグルト『SNKY』が、実にウマい!
あまり機能性のことをいうと、「ん〜、マズイ〜〜! もう1杯!」のCMで知られる某『青◯』をイメージさせて、「体に良いけど、おいしくないかも…?」と不安になる方がいるかもしれません。 が、その心配はご無用!『SNKY』はヨーグルトとして純粋においしく、そして体にも良い優れもの。「すんき菌」が生きているので、独特の酸っぱみはありますが、マイルドなおいしさです。
ここまでしてくれた関係者の努力に、頭が下がります。
(註:体に良いといっても薬ではありません。大量に食べれば効果がでるものでもありません。ご了承ください)
『SNKY』は固形タイプとドリンクタイプの2種類。デザインもおしゃれで関係者の熱意と商品開発力の高さがうかがえる。
なぜ木曽町には、アレルギー患者が少ないのか?
1つの疑問から生まれた 豆乳『SN26』
もう1つの木曽町オリジナル商品『SN26』も『SNKY』同様、スンキ菌を生かした乳酸菌発酵食品。こちらはヨーグルトではなく豆乳。
この研究には東京農業大学と信州大学が携わっており、じつに5年の歳月をかけて完成にこぎつけました。
発酵食の第一人者、東農大・小泉武夫教授のブログ『丸ごと小泉武夫 食マガジン』でも、こう報告されています。
『新発見!! アレルギーを軽減する 乳酸菌発酵豆乳【SN26】』
(以下、同ブログより)
“ 乳酸菌研究のスペシャリスト 保井久子先生(元信州大学大学院農学研究科教授・元木曽町地域資源研究所所長)が、長野県木曽地方の植物由来の乳酸菌だけで作る漬物「すんき」からアレルギーを予防・軽減する乳酸菌「Pediococcus pentosaseus(ペディオコッカス・ペントサセウス)Sn26」(以下「Sn26株」)を発見し、2016年11月3日に木曽町の自治功労賞に表彰された。”
「ペディオコッカス・ペントサセウス Sn26」(出展:丸ごと小泉武夫 食マガジン)
“ 同じ長野県内でも木曽地域は長野・松本地域に比べアレルギー患者数の割合が半分以下だったことから二つの地域の生活習慣の違いを調べた結果、木曽地域のみで食される、塩を一切使わず赤かぶの茎と葉を乳酸発酵させて作る「すんき」に、抗アレルギーなど免疫調節機能に高い効果を発揮する乳酸菌が豊富に含まれていることが確認された。”
“ 約50種類もの乳酸菌が含まれている「すんき」の中でも、「Sn26株」には血中IgE量を減少させアレルギー性下痢症の改善、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギーを軽減する効果あることがあることがわかった。”(太字は当サイト編集部)
イソフラボン効果で美容と健康に良いとされる大豆に「Sn26」の力が加わり
豆乳(大豆)X 乳酸菌 Sn26 ⇒ 乳酸菌発酵豆乳『SN26』
が完成!
長野県産 青大豆を使っているので少し青みがかった色ですが、その味はまぎれもなく豆乳。豆乳が苦手な人にはオススメしませんが、そうでなければ「この味で、体に良くて、そのうえ花粉症まで軽減されるのは夢のよう!」です。
まだまだ臨床試験の被験者数は少ないようで、「これで花粉症やアトピーが治ります」とはいえませんが、子どもの頃から重度の花粉症に悩まされる私などは、藁にもすがる思いで毎日食べ(飲み)続けたくなります。(その結果どうなるか? 追って実体験レポートします)
次回、『SNKY』と『SN26』を生んだ木曽町の無塩漬物『すんき漬』とその作り手たちをご紹介します。