至高の奥吉野メニュー 〜 レストラン「アコルドゥ」より

『アコルドゥ 〜 記憶を刻むレストラン』(特別インタビュー) を公開しているので、すでにご覧の方も多いと思いますが、奈良県にある『日本で最も美しい村』3町村の取材に合わせて、奈良市内のレストラン『アコルドゥ』の川島宙(ひろし)シェフに奥吉野にちなんだ料理を4品ご考案いただきました。

詳しくはこちらの「特集ページ」をご覧いただきたいのですが ↓

ページアップ時には、まだ料理名が決まっておらず、インタビュー記事のみを公開したため、以下にあらためて、正式な料理名と料理内容をご紹介します。

『葛城モッツァレラの葛 春の香りのピュレ』

アコルドゥ料理1

葛城の牧場でできるモッツァレラとホエー(乳清)を一緒にミキシングし、吉野町特産「吉野葛」を加えています。こうすることで柔らかいのに、プリッとした独特の食感を楽しめます。周りを囲うのは、翡翠色に輝く春の象徴「春菊」のピュレ。奥吉野の山々に春の草木が萌える。

『野迫川のアマゴ 燻された雲海とその下に生きるモノ』

アコルドゥ料理2

フタを開けるとフワーッとスモークが溢れ出てくる。これは古くからの霊峰・神聖なる地として崇められてきた奥吉野の山々に広がる雲海のイメージ。霧が晴れ、姿を現すのは「清流の女王」アマゴとフェンネルなどのハーブ類。この器のなかに、神秘的な吉野の自然が閉じ込められています。アマゴ(天女魚)は甘いリンゴのバルサミコ(果実酢)で軽く炙ってあり、食べやすい。

『五條イノシシのアロス ミント風味』

アコルドゥ料理3

春先の山々を生命力あふれるイノシシが駆け巡る… ここ奈良県南部は豊かな森と水に恵まれたお米の名産地。名水育ちのお米と大和伝統野菜「大和まな」のリゾットを新緑の山に見立て、低温でゆっくりと蒸し、ほぐれるほどになったイノシシと共にいただきます。春薫る爽やかさとイノシシの重厚感が見事にマッチした一品。

『人参のブランマンジェと曽爾の黒ビール』

アコルドゥ料理4

「若い人参の香りと甘みがサア〜っと広がる料理をずっと作りたいと思っていた」と川島シェフ。そのイメージを曽爾村の黒ビールと合わせることで、見事に具現化したのがこのデザート。ほろ苦いキャラメルの上に強く伸びようとするニンジンとほのかに薫る柑橘(ハッサク)の香りが、春を感じさせる。

 
どの料理も圧倒的においしいのは勿論ですが、息を呑むほど美しい。「美しい村」の神秘的な自然が、お皿の上に広がります。「料理は(シェフ自身を表す)自叙伝」という川島シェフらしく、その料理の裏には氏ならではの世界観、メッセージがあるのも印象的です。その考え方には「まちづくり」にも通じることが多いように感じます。

いくつか抜き出してみると…

川島シェフ

●「北海道であろうと、九州であろうと、良いところに目を向ければそれぞれに魅力があり、価値がある。そこに“心を向けられるか”ではないでしょうか」

⇒ 「ないものはない!」宣言で注目を浴びたのは島根県海士町ですが、「無いものねだり」をしていては前に進めない。灯台もと暗しにならぬように……。 大人が「こんな村なんて…」と言っていては、子どもたちが故郷を誇らしいと、住みたいと思うわけがありません。 あるものに「“心を向けられるか”ではないでしょうか」は、まさにその通りだと思います。

 
●「料理の裏にあるもの、その土地や人のバックボーンにあるものを、きちんと伝えなきゃいけない。その意思がないと、野菜をつくっている人はただ野菜をつくる人で終わってしまうし、料理人はただ調理すればいい人になる。意思のないものは、絶対に伝わらない」

⇒ 心を向けて、自らの(地域の)魅力・可能性に気づいたならば、それを「きちんと伝えなきゃいけない」。伝える「意思のないものは、絶対に伝わらない」。「きちんと」とは、人に伝わるよう丁寧に言葉に(言語化)すること。料理や写真、手紙、チラシ等、手段は何でも良いが、目に見える形で具現化すること。

外に向けて村の良さを発信していこうと思ったら、なんとなく「良いなぁ…」と感じることに、輪郭を与え「見える化」しないといけない。それ無しに、他者にも分かってもらおうと願うのはムリな話だ。「言語化」も「見える化」も大変な労力を要しますが、宝石も(原石を)磨かずば光らない、です。

 
●「自分たちが必要なもの、本当に愛しているものが何か、目に見える中で暮らしているのは、幸せなことではないですか?」

⇒ 大切なものに心を向け、それらに囲まれて暮らすことができたら、とても「幸せなことではないですか?」 都会で物質的には満たされているのに、なぜか不満やいらだちを覚えることがある人は、そんな「幸せなこと」に気づきにくくなっているのかもしれません。

もちろん、田舎は良くて、都会は窮屈という単純な話ではありませんが、川島シェフの話はとても示唆に富んでいます。

世界中(とくにフランスやイタリアなど美食で知られる国々)では、ものすごく辺鄙な田舎に超一流のレストランがあり、土地の風土(テロワール)に合った料理をふるまっています。そんなトップレストランに日本のシェフたちは好んで「修行」にいくのに、帰国するとなぜか皆、東京や大阪など都会にばかり集中してしまう。

その中で川島シェフは、トップシェフでありながら「奈良」という町を選び、この土地の風土に合った料理を作って、人をもてなしている。その言葉には含蓄があり、料理人のみならず、地方で「まちづくり」に励む人たちの参考になることも多いです。

ぜひ、記事本文をご覧いただき、奈良にお越しの際は、お店にも足をお運びください。
きっと愉しい発見があります。

関連記事

  1. つきぢ田村対談

    【対談】「美しい」と「美味しい」を届けるために

  2. ビーツ

    「だってキレイじゃないですか。」という強靭な理由

  3. ナースログ

    風倒木がまちを潤す 〜 ナース・ログの役目

  4. 中井春風堂

    たった1人の熱狂が、世界を変える

  5. 吉野川

    吉野山の観光渋滞を解消したというエリアマネージメントについて

  6. 大玉村直売所

    大玉村の「住民出資、村づくり株式会社」という挑戦