木曽町すんき漬

【木曽町 #5】愛おしく、いと惜しい「すんき漬」は300年を越えて受け継がれる

▼ 対話から生まれる「すんき」という文化
▼ ダム底に消えた村とともに蘇る。「黒瀬カブ」を復活させた西尾さん
▼ 売上700円の日があるから、今がある。母ちゃんたちの町づくり

今年のGWは10連休にもなり、故郷へ帰省した人も多いことでしょう。仕事でふだんと変わらずに過ごす人もいるでしょうが、こんなときは祝賀ムードを穏やかに見つめるのが良さそうです。水をさすのは野暮ってもんです。(※ 野暮 …人情の機微に通じない、風雅な心に欠けること。その人やさま。無粋)

故郷へ帰れる人も帰れぬ人も、こんな折には離れて暮らす人や町に想いを馳せてはいかがでしょう。

木曽町のある台所にて…

不思議なもので、見たことも行ったこともないのに、なぜか懐かしく感じる景色があります。この動画は、信州・木曽町の女性(野口廣子さん)が郷土の漬物「すんき」をつくるところから始まりますが、台所で下ごしらえする姿は、どこか見覚えのある情景に見えます。

対話から生まれる「すんき」という文化

“ 私もやっぱり、うちのおばあさんから(教わった)。
嫁に来てからだから、まぁ40年ぐらい。”

“ うまくいく、いかないが年によって変わるから、うまく漬けるのが目標になって、おもしろくなって… 漬けることがね。 あきらめないで1シーズンのうちに何回も、何回も漬けるんだけどね。”

そうやって「すんき」は受け継がれている。

野口さんのお人柄、口調のせいもあるだろうが、幼い頃、近所にいたおばさんの姿が重なる。うちには「すんき」も手前味噌もなかったけれど、いま思い浮かべる “記憶の中の故郷” には、お勝手があり、桶があり、お漬物がある。

木曽町すんき漬

すんきを漬ける野口さんはきっと、漬けながらおばあさんと、野菜と、目には見えない乳酸菌とも、対話しているのだろう。

“ 今まではつくらなかったけど、これからはつくってみようという人に来てもらいと思って ”

「すんきづくり教室」を開いている。

自分が食べるためだけなら、これほどの手間をかけ、時間をかけてつくらない。おいしいものは今や、簡単に手に入る。教えてくれた人や、それを受けとり喜んでくれる人がいるから続けていける。

ダム底に消えた村の記憶とともに蘇る。「黒瀬カブ」を復活させた西尾さん

すんき黒瀬カブ

漬ける人や土地に歴史があるように、使う素材にも物語がある。「すんき」に欠かせない在来種の赤カブは、集落ごとに味も形状もちがう。山間の木曽町では、それぞれが交配することなく伝えられた。

今も「すんき」に使われるのは、主に 開田カブ、王滝カブ、黒瀬カブ の3種類。

「この黒瀬カブが1番いいの」。
そういって圃場を案内してくれたのは「みたけグルメ工房」代表の西尾礼子さん(78)。

開田カブ

黒瀬カブは、旧三岳村の黒瀬地区に受け継がれてきた在来種だが、村は昭和23年のダム建設に伴い水底に消えた。黒瀬カブも同じく途絶えたと思われていたが、50年近くすぎた平成14年に、旧住民の1人が移住後も種を守っていると分かる。

このとき黒瀬カブ復活に奔走したのが、西尾さんだ。

農家を訪ねては、黒瀬カブを植えてくれるよう頼んだ。「グルメ工房で買ってくれるならいいよ」。そういう人が多かったので、「黒瀬カブなら、他所よりも高く買う」と約束して、値段も提示した。

そうして賛同の輪を広げつつ、採れた赤カブを無駄にせぬよう、製造・販売の準備を進める。今でいう6次産業化の走りだ。

カブの葉っぱは「スンキ」に。カブの実は「赤カブ漬」に製品化。農家のみならず、地域に雇用をうみ、経済が回る仕組みを築いていく。

1日の売上700円の日があるから、今がある。母ちゃんたちの町づくり。

最初からうまくいった訳では、もちろんない。話を聞いている最中、電話が鳴る。近くにある某大手企業から弁当配達の注文だ。わずか2ヶだけ。

「そんな注文、また受けて… って言われるけど、でもいいの。」
西尾さんは、笑っている。

営業を開始した当初は、1日の売上がわずか 700円。時給も払えなかった。「当時は、グルメってなに?っていう時代でしたから」。おにぎり1ヶ、おもち1ヶの注文でもありがたかった。

それが今や、工房のスタッフは12人、お弁当の注文を1度に600ヶまでなら受けられるまでになった。

笑顔が絶えない。会話が絶えない。カメラの前でもじっとしていられない。バラバラでポーズは決まらないが、それが「みたけグルメ工房」らしさかもしれない!? 事務所には県内はもとより、農林水産大臣賞など全国区の表彰状がところ狭しと並ぶ。

野口さんも、西尾さんも「親から教わった」ことを続けるうちに、好きになり、おもしろくなり、今は次の世代へ伝えている。

「スキなことにテ(手)を加えると、ステキになる」。そういった人がいるが、木曽町のすんきはまさに、スキなことに手間をかけ、手塩にかけて、ステキのバトンを受け継いできた。

木曽町 福島宿

そんな文化が、かつてはどの町にもあったから、初めてみるはずの木曽の風景を、懐かしく、愛おしく思うのだろう。

木曽路はすべて山の中。
愛おしい文化が、人知れず消えるのはあまりに惜しい。

遠い木曽路で、ステキな人が待っています。

「みたけグルメ工房」
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【住所】長野県木曽郡木曽町三岳10491−9「道の駅三岳」内
【TEL】 0264-46-3677
【営業】8:00~12:00
※「道の駅三岳」直売所は 8:30~17:00

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