レモンを見て、「おいしそう〜!」と思うか、「酸(す)っぱそう〜!」と思うか? ほとんどの日本人は後者でしょう。
レモンのあるシーンで思い浮かべるのは、例えば、唐揚げの添えものだったり、レモンティーやレモンハイに入れられた輪切りレモンなど。いずれも風味を添える「脇役」です。
ところが、これならばどうか?

フタを取った瞬間、テーブルに花が咲く レモン鍋!
レモンの下には豚肉や白菜、ネギなどがギッシリ。
鍋ときいて真っ先にレモン鍋を思い浮かべる人はごく少数でしょうが、こんな楽しみ方もあるのです。もちろんここでは、レモンが「主役」。
肉や野菜といっしょに、レモンの皮ごといただきます。

脂身の多い豚肉も、レモンとならさっぱりとおいしい。色味が涼しげだから、冬の料理・鍋も冷シャブ感覚で春さき以降も楽しめます。
見栄えよし、味よし、
美容と健康によし(ビタミンC)、
体力増強によし(疲労回復にクエン酸のキレート効果)。
これほど優れた食材を果汁を搾って捨ててしまうのは、あまりに勿体ない。
まるごと食べる「食材」としてのレモンの魅力を知らずに過ごすのは、大きな損失です!かくいうワタシもそれに気づかず、これまで過ごしていました… 「青いレモンの島」® 岩城島に会うまでは!

「瀬戸内海は世界の宝」 新渡戸稲造 博士はかつてそう称賛したという。その価値は離島にいってこそ実感できる。
瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ、愛媛県上島町 岩城(いわぎ)島。
サイクリストたちでにぎわう「しまなみ海道」(尾道〜四国・今治をむすぶ自転車で通行可能な橋)から外れるため、島へはフェリーが唯一の交通手段ですが、人口約2,000人のこの小さな島こそ、知る人ぞ知る「青いレモンの島」です。
圃場のみならず、民家の庭、道路脇など、いたるところにレモンの木が育っています。
レモン博士の「論より証拠」。やって見せねば、人は動かじ。

当然、島の人にとってレモンは、幼いころから身近にあって、毎日のように食べてきた、と思いきや……。
実は、岩城島にレモンがこれほど広まったのは、ここ40年ほどのこと。
こうも急速に広まった背景には、1人の研究者の存在がありました。

この方、脇 義富さんこそ、「青いレモンの島」の提唱者にして、島へレモンを普及させた張本人。愛媛県丸亀市出身で、岩城島へはいわば “移住者”。その経緯がユニークです。
大学卒業後、県に入庁し、新任地として赴いたのが県立果樹試験場の岩城分場。ここで研究者として、島の気候にあった品種の選定や栽培技術の普及につとめる傍ら、島の人たちと交流を深めます。途中、松山の果樹試験場への異動を挟みつつ、岩城分場長として島へ再赴任。気づけば定年までのキャリアのほとんどを岩城島で過ごすことになります。
いよいよお別れかというとき、「脇さんを島から帰さない運動」が起こります。脇さんの知見とそれまでの精力的な活動、お人柄をよく知る島民が、今後も島に残って力を貸して欲しいと要請するのです。

これを受けた当の脇さん。定年とはいえ、まだまだ気力充実。心が動きます。なにより、気になることが1つありました。
それまで島の人たちへは「1,000万円稼げれば後継者が育つ」と指導してきました。
つくって終わりの農作業ではなく、経営として成り立つ魅力ある農業とはどうあるべきか?
それを伝えてきた自負はあるものの、岩城島でも少子高齢化は進み、未来を楽観できない。他の島しょ部よりゆるやかとはいえ、人口流出は起きています。
ならば… 「論より証拠」!
自らやってみせ、島の人や外からの就農希望者が、農業に希望をもてるようにすれば良い。その道筋を拓く。 そんな想いで移住を決意します。
安い苗木を最新の高級柑橘に変える!「雲の上のエラ〜イ お方」




島の代名詞 「青いレモン」や「黄色いレモン」は勿論、「紅いレモン」や金柑とのかけ合わせで生まれた「ミニレモン」や「種無しレモン」まで! この島はまるで、島じゅうがレモンと柑橘の実験室であり先端基地。
「話を聞くだけでは誰も動かんけど、畑を見せると、みんな納得してマネしてくれる。」脇さんはいいます。
スタートは、まずレモンから。実は脇さんの赴任当初、島にレモンの木はほとんど無かったのです。しかし、ミカンは年に1度 収穫したら終わり。レモンなら春夏秋冬に花が咲き、それぞれ実をつける。それらを収穫・販売すれば、農家の収入は安定する。これが「青いレモンの島」誕生へつながります。
そのための品種「アレン・ユーレカ」(棘なしレモン)も選定し、高齢者が1人でムリなく作業できる圃場の仕立てまで、こまかく証明していきます(軽トラで果樹に横づけできるようにする等)。
そうして「畑を見せると、みんな納得してくれる」。まさに有言実行だ。

つづいて取り組んだのが、柑橘。「せとか」や「紅まどんな」など、首都圏の高級フルーツ店なら1玉 1,000円もの値がつく新品種も、ここでは当り前のように大勢の農家がつくる。そのやり方も脇さんが考案した。
「値段の安い温州みかんの苗木を1,000本ほど買って、それに高級品種を接ぎ木して育てるんです。この 交互結実法 や 斜め植え法 は、とてもいい技術」なので、教えを請う人には惜しみなく伝えた。
「技術さえあれば、高い新品種の苗木を買わなくても、栽培する方法はあるんです。」脇さんはクールだが、熱い。もはや、山本五十六さながらの「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」のよう。
そういえば、「この島で脇さんを知らない人なんてモグリ。エラ~イ、雲の上のお方」といっていた人がいた。取材するより、手を合わせた方がいいのかもしれない。
西日本豪雨を越えて。より美味しく、魅力的なレモン&柑橘づくりに向けて。

高級柑橘の代名詞「せとか」や「紅まどんな」などの新品種はもとより、「甘平」「たまみ」「媛小春」など、新旧の個性派柑橘がそろう。
そんな活力ある岩城島を、昨年は苦難が襲う。西日本豪雨だ。土砂が崩れ、全島で断水がつづく。人命に被害はなかったものの、農作物には損害がでた。
収穫が危ぶまれたが、果樹はみごとに実を成らせ、島民たちは前を向く。キズ果が多く、見栄えが落ちれば、取引価格も下がる。収入を直撃するが、表情は明るい。
「あんまり忙(せわ)しいのは好きじゃない。自分と家族がおいしいと思えるものを食べられれば、それでエエ。」脇さんは微笑む。あくまでも我欲はなく控え目だが、島の未来への期待は大きい。


今回のご縁を機に、島の皆さんと協力して、「青いレモンの島」の『レモン&柑橘セット』を販売することにしました。
ささやかですが、少しでも多くの人に岩城島とその住民の魅力を知っていただければ嬉しいです。
※ 3品が同時に揃う【4月中旬までの期間限定セール】です。