世界中からのラブコールを蹴って、選んだ相手は大玉村。
これ実は、南米ペルーの「天空都市・マチュピチュ」が、自らの友好都市パートナーを選んだときのこと。マチュピチュといえば、標高2400メートルを超す断崖の上に古代インカ帝国の神殿跡がひろがる世界的名所。年間150万人もの人が訪れ、抜群の知名度を誇ります。その人気は、世界中から友好都市協定の申し入れ “ラブコール” が届くほど。
そのマチュピチュが2015年に初の友好都市パートナーに選んだのが、福島県大玉村! なぜ、大玉村が世界遺産・マチュピチュから選ばれたか? その理由は…
マチュピチュ初代村長が、大玉村出身・野内与吉さんだから!
ペルーの古代都市の初代村長が、日本人とは、まるでウソのようなホントの話。(野内さんの孫・セサル良郎さん著『世界遺産マチュピチュに村を創った日本人』が詳しいです)
約1世紀前のこの大玉村とマチュピチュの出会いが、今年開催される東京オリンピック2020において大玉村がペルーのホストタウンを務めることにつながります。ところが…… 現在のおおくの大玉村民にとって、ペルーは必ずしも身近な国とはいえない。なにしろ、地球のほぼ裏側。ふだんペルーを意識することが、そうあるわけはありません。
ペルーといえば… アルパカ!?
歓迎ムードは盛り上げたいけど、具体的に何をしたらいいか? そんな悩みを抱いていました。そこで浮上したのが「食」。なにしろペルーは、
「世界で最も美食を楽しめる国」
World’s Leading Culinary Destination
8年連続 最優秀賞 獲得!!
(World Travel Awardより)
今や、世界中の美食家たちが大注目するグルメ大国です。食ならば、老若男女を問わず、村民だれもが関われる。アスリートにとっても、健康・コンディショニングは最優先事項。しかも、言葉が通じずとも、おいしいものは人を笑顔にする!
そこで「ペルー料理を食べてみよう in 大玉」開催です。
「ペルー料理は、どうやらかなりウマいらしい…」。そうは聞いたものの、村にペルー料理に詳しい人はいない。食べたことがある人さえ少ない。「どうすんだい?」の声が上がります。ここで動いたのが、大玉村特集「やってみっぺ」で地域をつくる!住民出資「村づくり株式会社」の挑戦で紹介した、大玉村「あだたらの里直売所」矢吹店長。
『逆転の発想で仲間を増やす。矢吹店長の巻きこみ術』の言葉どおり、「無いのなら、あるところから(力を)借りればいい」を実践。つぎつぎ仲間を増やしていきます。ペルー人シェフを呼び、大玉村国内外交流協会とともに、農家・飲食店・行政、さらには一般のおばちゃんたち…
「できっか分かんねぇけど、まずは出来ることをやってみる」。悩んでいても何も変わらない。1度やれば、違う景色が見えてくる!
最初の企画会議は、11月。
「食べてみよう」開催は、翌1月。
わずか2ヶ月弱で実現する。スピード感がスゴイです。
ペルー料理 #1「カウサ・レジェーナ Causa Rellena」
ゆでたジャガイモをつぶして、ツナやアボカドなどと挟みます。かわいい形とカラフルな色が目をひく家庭料理です。
熱量は、伝播する。矢吹店長の呼びかけは、村内にとどまらず、東京のペルー人シェフの心も動かします。「村でペルー料理を食べてみたい」。その想いに応えたのは東京・青山でペルー料理「レストラン ALDO|アルド」を経営するオーナーシェフ・浦田アルドさん。
「村でキヌアも作ってる」「オリンピックでペルー選手たちが来る」「郡山の近く!?」
実はアルドさん、30年前に初めて日本へ来たときに滞在したのが、福島県郡山だったのです。
「自分になにか出来ることがあるなら…」。そういって、お店の休業日に大玉村へ出向いてくれました。
日常会話に不自由はしないものの、日本語はまだ完全とはいえず、多少不安はありました。それでも「まずは行ってみっぺ!」です。
ペルー料理 #2「アヒ・デ・ガジーナ Aji de Gallina」
鶏肉を黄色唐辛子ソースで煮こむペルーを代表する伝統料理です。アヒとはトウガラシ、ガジーナは鶏肉のこと。カレーライスに似て日本でも人気です。
村に滞在中はかけあしで生産者を訪問し、さっそくメニューに生かすなど、刺激的だった様子。
なにしろ、キヌアのみならず、ジャガイモ、トマト、トウモロコシ等、ペルー原産の野菜は実に多いのです。そのうえ「世界で最も美食を楽しむ」文化が加われば、鬼に金棒! 「大玉村で作ってくれたら積極的にお店で利用します」と頼もしいパートナーになってくれました。
1人で全部ガンバらない。成功の秘訣は、こんなところにもありそうです。なにしろ、新しいことに挑めば、課題はつぎつぎ出てくる。やめる理由を見つけるのは簡単。だからこそ、1人で抱えこまない。
今回は、仕事、年齢、役職を越え、いろんな人が加わりました。料理が得意な人はシェフのサポートを。野菜生産者は食材を持ち寄り。年配者は会場準備や片づけなど。「それなら私にも出来る」をちょっとずつ出し合って実現しました。
行政(補助金)に頼らず、ちゃんと参加者からはお代(食事代)を受け取り開催するのは、さすが「村づくり株式会社」です。
アルドさんによると、「サポートしてくれた皆さんの力なくして、時間内に(料理を)仕上げるのは無理だった。大玉村のシェフたちのレベルは凄く高いね!」。村の人気レストラン「Cocotte|ココット」の山田崇夫シェフ、「アットホームおおたま」の荒川幸則 料理長、そして「Café & Restaurant たかのは」の中條弥朱(みあけ)さん、ありがとうございました!
ペルー料理 #3「ロモ・サルタード Lomo Saltado」
牛肉、トマト、玉ねぎ、ポテトなどと一緒に炒めしょうゆで味付けします。食堂には必ずあるといって良いペルー人の「ソウルフード」です。
かけあしで大玉村を巡ったアルドさん。今度はプライベートでも村を再訪し、生産者やシェフたちと話したいそうです。約100年前、大玉村の21才の青年・野内与吉の「ペルーへ行ってみっぺ!」で始まった村とペルーのつながりが、今こうして次の交流を生んでいる。
今度はどんな「やってみっぺ!」で未来を拓くか? 大玉村の今後に注目です。
「あだたらの里 直売所」
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【住所】福島県安達郡大玉村大山字新田10-1
【TEL】 0243-48-2317
【営業】8:30~18:00(10月~3月は17:00閉店)
【定休日】年末年始のみ
ペルー料理「レストランALDO|アルド」
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【住所】 東京都港区南青山3-3-23 Sta-bld B1F
【TEL】 03-6427-7223
【営業】ランチ:11:30~14:30、ディナー:18:00~23:00
【定休日】月曜日