信州・木曽町の糀(こうじ)味噌屋・小池糀店さんから「味噌せんべいをリニューアル」との連絡をいただきました。これまでは、同じ長野のせんべい屋さんに焼いてもらっていましたが、同店閉店にともない別のお店で焼いてもらうことになったのです。
「新・味噌せんべい」をつくるのは、東京・下町(葛飾区)にある老舗せんべい屋・富士見堂さん。最近はテレビ・メディアに度々登場する、知る人ぞ知る人気店です。昭和25年の創業以来、せんべい一筋でありながら、都心の最激戦区といえるJR東京駅 地下グランスタ、東京スカイツリータウン、池袋東武百貨店にもお店を構え、若い女性をふくむ幅広い層から支持を集めています。
洋菓子に比べると、地味なイメージの「おせんべい」が、なぜ今、若い人からも人気なのか? 下町の小さな「おせんべい屋さん」は、いかにして東京の人気スポットで10年以上にわたり支持される評判の店へ変化したか? 木曽町の味噌屋と東京のせんべい屋をつなぐ糸とは? そして生まれた「新・味噌せんべい」のお味は?
それら疑問の答えを探るべく、富士見堂3代目となる現店主・佐々木健雄 社長に話を聞きました。そこに見えたのは、一企業の成長譚にとどまらず、日本各地で(味噌やせんべい、日本酒や醤油、工芸品など)伝統産業と呼ばれるモノづくり企業がおおいに参考にすべき点に満ちていました。信州 木曽町・小池糀店 & 東京 葛飾区・富士見堂せんべい【特別コラボ企画】です。
東京の下町にある京成線・青砥駅から徒歩5分。住宅地の一角に、富士見堂はあります。にぎやかな駅前の商店街ではなく、中心から離れた、お世辞にも決して商売に向いているとはいえない場所。ここが、富士見堂が長く根ざした原点であり、支店が増えた今も大切にする “ふるさと” です。
“ デザインを変えて、こだわりを謳っても、お客様に買って頂けるかは別。目を引くデザインにすれば、手にとって頂くことはできる。しかし、それがイコール、買って頂ける商品かというと、そうではないのです。パッケージだけだと、お客様は離れていってしまうんですね。”
「モノづくり」が尊重されるあまり、サービス業としての見せ方・伝え方が後手になりがちな伝統産業で、富士見堂は「モノづくりの先」を充実させて今を拓いたといえます。根っからの職人には難しいことにも見えますが、「以前は服飾業界の営業マンをしていましたから」と佐々木社長はかろやかに語る。
“ 若い人は昔の人ほど根性論では続きませんが、認められると非常にガンバれる。自分がつくったせんべいが、東京駅やスカイツリーのお店に並ぶ。それを見た友だちが、スゴいといってくれる。そうしたことがモチベーションになるようです。”