地方を巡っていると、その土地に合った「しみじみおいしい料理」に出会います。それはたいてい、味覚としておいしいだけじゃなく、滋味あふれる、「体よろこぶ料理」でもあります。
一方で、おいしいなぁ〜 とは思うものの、商品として購入するには「ちょっと惜しい」、あともう一歩なにかが足りない… と感じるケースも少なくありません。
それはたいがい、パッケージングをふくむ見せ方・伝え方だったり、規格や味付けの微妙な差異だったりするのですが、懐かしさと心地よさの(現代のマーケット感覚にあった)バランスをうまくとっているなぁ〜 と感じさせてくれるのが、長野県阿智村にある「あちの里」さんの商品。
先だって公開した『あちの里』特集ページ(上画像バナーをクリック)もさっそく好評を博していますが、1つずつの料理はいずれもいわゆる「田舎料理」であり、昔ながらの「ふるさとの味」です。しかしご覧のとおり、けっして寂れた感じはなく、むしろ華があってワクワクする食卓を生む一品になっています。
古いだけでもダメ、流行を追いかけるだけでもダメ。そのバランスをいい塩梅にとっている。「あちの里」河合社長のことばを借りるなら、
「私たちは、地元の食材や文化を大切にしたいけど、郷土料理をそのまんま出すのでは、よその人を引きつける力、実際にお金を払ってもらえるだけの商品にならないんです。」
たとえば…
「あちの里」の代表的商品である『トマトソース』。
トマト栽培から製造まで自分たちで行い、完熟トマトを使うこだわりを持っていますが、それだけで大手がひしめくトマトソース&ケチャップ市場で勝ち残るのは難しい。
味がおいしいのは当たりまえで、プラスして自分たちならではのオリジナリティを注入し、「これでなきゃダメ!」と思わせる高みを目指す。難しいけど、そうまでしないと「ふるさとの味」が「売れる商品」にまでならない。具だくさん『ヘルシートマトソース』は、そんな苦悩、試行錯誤をくり返した末、トマト、タマネギ、ぶなしめじ、ニンニク、さらには高野豆腐を入れてようやく完成した。
文字どおり、おいしさと栄養がギュ〜ッと凝縮しているから、これ1つでパスタはもちろん、肉料理などに合わせてもしっかりと料理の味とバランスを支えてくれる「これじゃなきゃダメ!」になった。
そんなオリジナリティに富んだ商材があるからこそ、オーソドックスなケチャップも安定して買い求められる。「こだわって作ってます」や「地元野菜をいかした昔ながらの味です」だけでは、受け手の心に届かない。
「郷土料理を売っている、じゃないですよ。それらを受け継ぎつつ、新たな商品を生んでいるんです。」 そういう河合社長の言葉には、幾多の苦労と失敗をかさねてきた製造・販売事業者としての自負がにじむ。
信州味噌が知られる長野県だけに、味噌をいかした商品もたくさんある。ここでも「伝統を受け継ぎつつ、オリジナルを生む」姿勢は変わらない。
『鬼くるみ味噌』は、NHKの朝ドラ『半分、青い。』で大人気になった五平餅のようにお餅やパンなどとの相性がよい甘辛風味。チューブ型だから塗ってすぐ食べられるのもうれしい。
『金山寺みそ』は、瓜(ウリ)、ナス、生姜、人参、昆布など、野菜たっぷりのおかず味噌だが、多くの金山寺味噌と違ってこちらはサラサラ感覚に仕上がっていてちょっと驚く。お茶漬けなどにもちょうど良い。
『ゆず味噌』『そば味噌』『さんしょう味噌』は、スタッフの原さんがいうとおり「揚げナスや焼きナス、ふろふき大根や豆腐田楽などにつけると、とてもおいしいです!」 季節の野菜や料理にあわせて、「今日はこれにしよう ♪ 」と、その日の気分で選び、楽しんでください。
こうして昔からの料理に自分たち流のアレンジを加え、ここにしかないオリジナルに変える、自家薬籠中のものとするのが「あちの里」の得意技。
創業当初、年輩のお母さんたち3人で始まった工房には今、若い母親世代のみならず男性スタッフも混ざって、食の記憶・郷土の伝統を受け継いでいる。それがひいては地域全体への愛情や誇りにもつながると信じている。
「郷土の伝統を守りましょう」と何万回いうより遥かにつよく、柔軟に、ここでは暮らしの知恵が伝承されている。現代の暮らしにもフィットし、若い人にとっても心地よい「あちの里」の商品は、“懐かしいけど、あたらしい”。
次回「あちの里」の「お漬物&スイーツ」につづく。