香月

【飯豊町 #5】人気菓子店「香月」は、兄・和菓子、弟・洋菓子を通して町を元気にする!

たしか、糸井重里さんだったと記憶しているのだが、「1軒のいいパン屋さんがあるだけで、町全体が元気になれる」。そんなことを言っていた、と思う。

パン屋さんというのは比喩で、団子屋さんでも、定食屋さんでも、もしかすると花屋さんでも良いのかもしれない。ふらり立ちよって、なんということもない会話をして、ちょっとだけ買い物もして、元気をもらって帰っていく。

「いいお店」って、そんな感じ。

飯豊町_香月

「もし、県外で暮らす自分の息子か娘に、なにか送ってあげるとしたら、何を送りますか?」

町の人にそんな質問をしたら、一瞬の間のあとにこう返ってきた。
「香月(こうげつ)さんのお菓子かな…」

興味が湧いて、菓子屋・香月さんを訪ねていったとき頭に浮かんだのが、さきほどの「いいパン屋さん〜」の話。

店内にはカフェもあって、地元のおばちゃんやおじいちゃん、若い女性客など、入れかわり立ちかわり訪れては、めいめいおしゃべりして、ケーキやお団子を食べて帰っていく。

店主の奥さんと思われる方が、女性グループのお客さんと談笑し、笑みがこぼれている。「販売者」と「消費者」という形式的な関係ではない。人として親しくおつきあいできる関係。そう伝わってくるのが心地よい。

「香月」4代目・長男の味田(みた)勝徳さん(37)に話を聞いた。

「ヘンに洋菓子をとり入れようとは思っていません。自分の担当は、和菓子ですから。」

香月・味田勝徳

「香月」の創業はおよそ90年前。和菓子屋としてスタートした。初代・2代目は和菓子を志し、3代目の勝一郎さん(勝徳さんの父)の代から洋菓子を始めた。

4代目の勝徳さんは、ふたたび和菓子の道に進むが、父・勝一郎さんもまだまだ現役だ。傍らには、弟の勝士(かつし)さんもいる。勝士さんが「香月の洋菓子」を継いでいく。

和と洋が揃うことで、品ぞろえも客層もグッと幅が広がり、それが「香月」の楽しさを生んでもいる。洋菓子職人(パティシエ)の父や弟と一緒なので、和と洋の合作のようなお菓子も生まれるのでは… と思い尋ねると、

「ヘンに洋菓子をとり入れようとは思っていません。自分の担当は、和菓子ですから。」

そう返ってきた。あくまで基本は忠実に、軸はブレない。勝徳さんの芯の強さを感じる。

香月・和菓子

そんな勝徳さんがつくる和菓子は、しっかりと和のスタイルに倣いつつも、現代的な感性が随所に光る。

一見、ベーシックな「どら焼き」も、中はご当地名産・だだちゃ豆を生かした「だだちゃ豆どら焼き」だったりする。

他にも、桃や柿、ハチミツや日本酒(どぶろく)にいたるまで、季節にあわせて地元食材を積極的にとり入れている。

「地域の仲間といっしょに『飯豊町ブランド』を盛り上げていきたいですね。」

自分がよって立つ足元を見つめつつ、その視線はさらに広い世界を見つめている。

香月特製 「焼きチョコまんじゅう」 がおもしろい。見かけはクッキー、でもフワフワ。名前はまんじゅう、でも軽くて香ばしい!

香月・洋菓子

そんな勝徳さんの心強いパートナーであり、刺激にもなるのが、弟の勝士さんだ。3年前に東京での修行から戻って以後、父のもとでさらに洋菓子の道を探求している。

じつはお店に来る前に、ある方からこう聞かされていた。

「(山形)県南で、お菓子の香月さんを知らない人は、いないよ。」

それほど地域の人たちから愛され、支持されている。その「香月の洋菓子」を1代で築いたのが、父・勝一郎さんだ。

お父さんの話も聞こうと思ったが、「私はいいから、息子たちを…」と、笑った。この父あればこその、息子たちなのだろう。

次男・勝士さんが父とともにつくる洋菓子は幅広い。デコレーションのような生菓子はもとより、クッキーにパウンド、ドーナッツにパンまで。

ドーナッツといっても油であげる一般的なドーナッツではなく、1つずつ専用オーブンで焼く 「焼きドーナッツ」 だ。かぼちゃ、ほうれん草、小豆、いちご、ゴマ、etc… フレーバー(味)も様々で個性的。

1番シンプルな「プレーン」を頂くと、油であげていないから重くはなく、焼いているのにパサついていない。“しっとりケーキ” という感じだ。

飯豊町・香月

1番印象に残ったのが、「焼きチョコまんじゅう」(焼菓子写真・上、手前)。パッと見、チョコクッキーだが、外皮がふわっと衣のようになっていてチョコレートを包んでいる。その丸み具合が、確かにまんじゅうを思わせる。

見かけもさることながら、食べたときの食感がまたおもしろい。クッキーのつもりで食べると、衣がふわっとくずれて口当たりが軽く、それでいてサクッとした食感も残っている。チョコレートは焼くことで香ばしさを増している。

「焼きチョコまんじゅう」って、和菓子・洋菓子どっちやねん!とツッコミたくなるネーミングだが、食べると「なるほどねぇ〜」と納得してしまう。洋酒がきいているので、大人向きのちょっと贅沢なスイーツといえよう。

(勝徳さんは「ヘンに洋菓子をとり入れようとは思っていません」と言っていたけど、こういう商品は「和洋菓子・香月」ならではのような…?)

「ながめやま牧場のミルクジャム」「柿のコンフィチュール」「ドライフルーツ・ナッツ入りはちみつ」、地元コラボ商品が続々!

和洋菓子の老舗という以外に、もう1つ「香月」を語るうえで忘れてはいけないのが、地元の食の魅力(こと菓子・スイーツに関して)の「情報発信拠点」になっていることだ。

【飯豊町 #4】東北初の完全放牧酪農に挑む、ながめやま牧場で紹介した「ながめやま牧場」の牛乳を煮つめてつくったミルクジャムをはじめ、地元「柿の木会」とコラボした「柿のコンフィチュール」「柿酢」「柿ようかん」など。意欲的に商品開発と「飯豊町ブランド」向上につとめている。

香月・ナッツはちみつ

なかでも「これはイイ!」と思ったのが、「ドライフルーツ・ナッツ入りはちみつ」だ。飯豊産トチ(栃)のはちみつの中にドライフルーツとナッツが文字通りギッシリ入っている。

近年のヘルシー志向をうけ、「ナッツ入りはちみつ」は高級スーパーなどで見かけるようになったが、「香月のナッツはちみつ」にはアーモンド、ピーカンナッツ、カシューナッツ、マカダミアナッツの他に、いちじく(ドライフィグ)とアプリコットがゴロゴロ入っている!

かるく焼いたトーストは勿論、ヨーグルトやアイスにかけるだけで満足度がグッと上がるし、なによりナッツ・はちみつ・ドライフルーツという “体にいいもの3点セット” だ(砂糖無添加)。難をいえば、かけすぎて減りが早いことぐらいだろうか。(検証はしていないが、きっと美容にもいいに違いない!?)

お店の雰囲気、品揃え、地域とお客さまに対する姿勢、等々。なぜ「香月」に人が集まるか、分かる気がする。

「1軒のいい菓子屋さんがあるだけで、町全体が元気になれる。」

そういわれる「いいお店」へ向け、4代目兄弟は力を合わせる。

和菓子・洋菓子 香月(Kogetsu)
ーーーーーーー
【住所】山形県西置賜郡飯豊町萩生4400-5
【TEL】0238―72―3923
【営業】9:00~20:00
【定休日】年中無休

飯豊町バナー

関連記事

  1. 大玉村、森の民話茶屋

    【大玉村 #4】民話で育む村の力 〜 民話茶屋・後藤さんの民話と手料理は、心の鼓動を伝えるライブ

  2. 秘境キノコ_ぶなしめじ

    【十津川村 #2】山の奥地に見つけた、圧巻の「秘境キノコ」!

  3. 【大玉村 #5】『大玉村BOOK』発行しました!

  4. 吉野町国栖地区

    【吉野町 #4】「日本で最も美しい村」から世界に発信 〜 国栖(くず)の里に伝わる「おふくろの味」

  5. 富士見堂せんべい

    【東京 下町】伝統と流行の狭間で 〜 せんべい屋・富士見堂の粋(前編)

  6. 南三陸町 はらこ飯

    【南三陸町 #1】『はらこ飯』〜 伝統はこうして受け継がれる

  7. 米沢牛

    【飯豊町 #3】米沢牛というトップブランドを引きうける覚悟

  8. 中津川民宿

    【飯豊町 #1】民泊の先駆け「なかつがわ農家民宿組合」は、助け合いながら個性を磨く。

  9. 中井春風堂

    【吉野町 #3】「賞味期限は10分。」ここに来なければ食べられない、本物の「吉野本葛」を学び、食す、世界に1つの葛道場

  1. 南三陸町復興公園

    【3日間限定|送料無料】南三陸の美味「酒肴セット&オリーブオイ…

    2021.03.11

  2. 愛媛県上島町・岩城島の柑橘

    「今すぐ、あるだけ全部送って!」プロが全量買いつけたフルーツと…

    2021.03.02

  3. 和菓子の侘び寂び 〜「香月のイチゴ大福」は眺めたあとに舌鼓

    2021.02.28

  4. あと2週で終了「これが本物か!」と驚くワカメしゃぶしゃぶの旨さ

    2021.02.21

  5. うれしい誤算… 季節をめぐる完熟ジャムが次々に売り切れる

    2021.02.16

  1. 「青いレモンの島」のレモンカード

    「元気を出して…」 レモンカードとライ麦パンは、やさしく背中を押…

    2019.12.17

  2. 他郷阿部家 松場夫妻&ドミニク・コルビ

    【特別対談】フレンチの巨匠ドミニク・コルビ氏×石見銀山「暮らす宿…

    2019.12.30

  3. 大森の郷

    【11〜12月 アクセス・ランキング】第1位は秘境・十津川村の古民家…

    2018.12.26

  4. 梅のブランデー漬

    【SHOP】しみじみおいしいの秘密「カリカリ梅のブランデー漬」

    2019.07.23

  5. 割烹TAJIMA

    『割烹TAJIMA』(代官山) &十津川村の生ナメコ【お店探訪】

    2018.11.19

「上島町 岩城島」特集

岩城島バナー

「あちの里」特集

阿智村特集

「山形県 飯豊町」特集

飯豊町BOOKバナー

「福島県 大玉村」特集

大玉村BOOK
メルマガバナー