大玉村、森の民話茶屋

【大玉村 #4】民話で育む村の力 〜 民話茶屋・後藤さんの民話と手料理は、心の鼓動を伝えるライブ

大玉村には、郷土料理を食べながら民話を聞かせてくれる「民話茶屋」がある。そう聞いて、さっそく訪ねていった。

「民話」といっても、あまりイメージが湧かない人が多いのではないだろうか。むしろ「昔話」といった方が、なじみ深い。「昔々あるところに…」というおなじみのフレーズを知らぬ人はいまい。

大玉村、民話茶屋

民話はそんな昔話も含むが(「昔々…」で始まり「めでたし、めでたし」で終わる等の)定形にはまらず、もっと自由に、人の口を通して受け継がれてきた話の総体だ。

口伝・口承であるから、自ずと、人から人へ直接伝えられる狭い範囲(地域)限定となる。岩手県遠野町に伝わる民話を柳田国男が “収集” した「遠野物語」をイメージすると分かりやすいだろうか。

その「地域の物語・民話」を大切に受け継いでいこうと活動しているのが、大玉村『森の民話茶屋』を営む後藤みづほさんとその仲間たちだ。

古い民家のような所かな… と、勝手に想像していたのだが、着いたのは小高い丘の上にある洒落たコテージのような建物の前だ。

ふつうの家庭料理が「今日この日だけ」の特別な料理に変わる

「今日は、ありったけの野菜を入れた味噌汁もおつけしましょう。」 そういって、後藤さんたちは、次々と地元食材満載の手料理を運んできてくれる。

イカ人参、三五八(さごはち)漬、くきたちのおひたし、新玉ねぎの酢漬け、ウリの奈良漬、大根もち…… どれもメンバーや近隣の方々が作った食材を生かした郷土料理ばかり。

各品は、いわば「ふつうの家庭料理」だ。特殊な料理はない。ただし「“ただの” 家庭料理」ではない。

「アコルドゥ」の川島シェフがいっていた。料理には4種類ある。「1つは、生きるための糧(=食料)。 2つ目は、美食(グルメ)。 3つ目が、愛情としての料理。 そして4つ目が、芸術としての料理」。

「森の民話茶屋」でふるまわれるのは「愛情としての料理」。それが「ただの家庭料理」ではないという訳は、1品ずつに込められた愛情が、尋常ではないと伝わってくるからだ。

なぜ分かるか?

大玉村、民話茶屋
大玉村、民話茶屋

「これはね、昨日、佐藤さんが庭先で採ったくきたち。サッと湯がくだけで、こんなに甘みが出るの」

「このきゅうりは、ご近所の田中さんが沢山とれたからって、持ってきて下さった、そのおすそ分け」

「そうしていろんな人からご好意を分けて頂いて、私たちももっとおいしく料理して、喜んでもらえるようにしなきゃと思う。だからガンバれるんでしょうね」

配膳の度に、村のこと、料理のこと、生産者のこと、そして調理した仲間のこと。1つ1つ丁寧に、うれしそうに話してくれる。その表情や言葉から、よろこびや感謝があふれ出ている。

その感情が、こちらにもビンビンと伝わってくるから、ここでの料理が「ふつうの家庭料理」でありながら、「“ただの” 家庭料理」ではないと感じられる。

やはり、愛情は最高のレシピなのだ。

「村の人が、村のことを、もっと知ろうと変わりだした」

食後にリクエストがあれば、いよいよ民話ライブとなる。
特にステージがあるわけではない。食事をしていた椅子に腰かけながら、そのまま聞けばよい。演目が決まっているわけでもない。「ジャズのように、お客さんの反応を見ながら話を決める」そうだ。

森の民話茶屋

いざ、開幕… と……

何かが憑依(ひょうい)したかのように、後藤さんの口から、言葉があふれ出てくる。

よどみなく、ツラツラと、福島弁のアクセントで、民話がつむがれていく。

正味5分ぐらいだろうか。 ス〜ッと、別の世界に遊離していくような、静かな世界。

子どもの頃、寝床でよく、母親が「おはなし」をしてくれたっけ……
話を聞きながら、眠りに落ちていく心地よさ……

いわゆる「民話を聞く」という体験自体は、初めてのはずだけど、なんだか懐かしい。
アッという間に、終わってしまった。

森の民話茶屋、書棚

「森の民話茶屋」を訪れた日、ちょうど地元の地域協議会メンバーも食事に来ていた。食後には、大の大人が15人ほど、静かに民話に耳を傾けている。

お店を出ていくときの表情は、皆、晴れやかだ。

「料理も民話も、お客さんと一緒につくるもの。ただの昔話ではなく、今の状況を知った上で、民話をするのを大事にしている」と、後藤さん。

誰がつくったのかも分からない。けれども何十年もの間、伝承されてきたのが、民話の世界であり、民話の魅力。それを次代に受け継いでいくのも、自分たちの役目と後藤さんたちは心得ている。

「少し前までは、村の人が、民話とか村のことを知ろうとする動きもなかったんです。最近、そういう動きが活発になってきたのを感じます。」 同行の直売所・矢吹店長が教えてくれた。

村の物語を大切にする所には、個性も魅力も生まれる。それがまた人を惹きつける力になる。
大玉村はそんな方向へ進んでいるようだ。

「森の民話茶屋」
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【住所】福島県安達郡大玉村玉井字前ヶ岳国有林7林班
【TEL】 0243-48-4648
【営業】10:30~15:30
【営業日】土日・祝日のみ営業

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