こねりのパン

【中川村 #3】5年越しで理想の家を発見。『暮らしの工房 こねり』大池さん夫妻が見つけた「心地よい暮らし」

中川村のことを調べるうちに、もの凄くおいしそうな天然酵母パンを焼くお店に出会った。リンゴ、山イモ、にんじん、ご飯からできた酵母をつかって焼いている。

パン屋さんはいろいろあるけれど、多くはやわらかな菓子パンや惣菜パンが主流。ヨーロッパのように食事のメイン(主食)となり、野菜や肉料理と合わせてもしっかり小麦の風味をきかせてくれるハード系パンは、日本ではまだ少ない。

『暮らしの工房 こねり』ではカンパーニュなどのハード系食事パンがメイン。「ときどき作る」という、自家製酵母発酵の豆乳ヨーグルトを使ったチーズケーキもむちゃくちゃおいしそう。「ここに行きたい!」と思った。

お店は、村の田園風景を見下ろす、小高い丘の上にある。5年間探しつづけて、ようやく見つけたという。

「もともと友だちが住んでいたんですけど、“出るので、どう?” といわれて。」

来てみたら、まさに「ここだ!と思った」と、大池達也さん(51)はいう。

元々は、奥さんのさおりさんと共に、名古屋でグラフィックデザイナーとして働いていた。当時は「仕事で成果を出すことをゴールにしていた」とふり返る。

でも「本来もっと大切なゴールって、何なの?」「自分たちが心地いい と思う暮らしって?」という声に向き合ったとき、都会を離れ、自然に囲まれた環境で子どもを育てることを決めた。

大池さん夫婦と話していると、どうやら「こねり」をよく理解するキーワードは、「そもそも」にあるようだと感じる。

「そもそも、私たち、どんな暮らしがしたいんだっけ?」

「そもそも、子どもたちを幸せに育てるには、どんな環境が1番いいんだろう?」

「都会にいると生活コストを稼ぐために働かなきゃいけないけど、そもそもの理想は、仕事と暮らしが一体になることだよね…」

そうやって「そもそも…」と、ものごとの本質を見つめていくと、やるべきことが見えてきた。ゆったりした空気が流れる『暮らしの工房 こねり』は、大池さん夫婦が暮らしを丁寧につむいできた結果、生まれたものだ。

暮らしの工房 こねりカンパーニュ

お店の看板といえる「カンパーニュ」は、麦が薫るハード系食事パン。蒸すと一層おいしさが増す。

では、そもそも大池さん夫婦にとって、なぜ移住先が中川村だったのだろう?

「はじめは安曇野や白馬など、名の知れたところを考えていたんです。ちょうど飯田市にデザイン職の募集があるのを見つけて、(中川村の隣り)松川町にまずは移住して、その間にどこか良い場所を見つけようとしました。」 そうして中川村にも出入りしているうちに、徐々に村へと惹かれていく。

「観光地化された町よりも、さらに自然が豊かで、でもちゃんと利便性もある場所の方がいいかなと。それになにより、中川村は風通しがいいんです。おもしろい人が、どこにいるか見える!

自然環境は大事だけど、どんな人と一緒に過ごすかもすごく大事。どんなご縁が生まれる場所かは、幸せの実感値を大きく左右するから。

その点、中川村には30〜40代のアーティストや職人気質の人が多くいる。【中川村 #2】でご紹介した「basecamp COFFEE」の伊藤さん夫婦もそうだし、工芸作家や建築家などの移住者もいる。

入口脇の大きな黒板「FREE Wai-Wai (ワイワイ)」には、子どもたちがメッセージ(落書き!?)を書いていく。閉鎖された村の塾から譲り受けた。

今、「こねり」のお客さんには、小さな子どもを連れた若いお母さん世代が多い。さおりさんの “ママ友” がいるのも一因だが、なにより「こねり」の雰囲気が、ママと子どもをホッとさせるのだ。

「店内のイスと机は、地元の保育園が閉園になると聞いてもらってきました。」 それが “いい味” を出している。奥のたたみ部屋には、子どもがゴロリ寝ころんで遊ぶのに十分なスペースがある。「いなかのおうち」に帰ってきた気持ちになれる。

きっと、ママも子どもも「パン屋さんに買い物に行く」ではなく、「こねりさんへ遊びにいく」という感じなのだろう。

最後に、そもそもなんで「パン屋 こねり」ではなく、『暮らしの工房 こねり』なのか?

実は「こねり」がパン屋として営業しているのは、週2回(基本、木曜&土曜日)のみ。夫・達也さんの本業は、整体師。体のコリをほぐす整体(マッサージ)がメインだ。

だから整体とパンを軸に「暮らし全体を心地よいものにする」のが『暮らしの工房 こねり』のお仕事。 いいかえると、そもそも整体もパンも、それ自体が目的じゃなく、人とご縁をむすび、「幸せに暮らす」ための手段やきっかけ であるということ。

なんだか、奥さんのパン紹介ばかりで、旦那さんの整体には触れぬまま終わってしまった…… 今回は時間の都合で、整体を受けられなかったのです。 達也さん、ゴメンナサイ m(__)m

休みの日にふらっと立ちよりたくなるお店。
そんな『暮らしの工房 こねり』さんです。

『暮らしの工房 こねり』
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【住所】長野県上伊那郡中川村片桐5095
【TEL】 090-5618-0271
【営業時間】パン:木曜 10:30~17:30(土曜不定期営業、年始・夏季休業あり)
※ 整体については、上記へ直接お問合せください。

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